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ガイドライン



Japanese Society of Tissue Transplantation


     「ヒト組織を利用する医療行為の倫理的問題に関するガイドライン」 平成14年8月2日

目次

1. 序文
2. T.基本方針
U.対象の組織
3. V.ヒト組織を利用するにあたって遵守すべき基本原則
4. W.ヒト組織の採取に関する基本原則
5. X.ヒト組織の移植施設への提供及び移植への利用について
6. Y.研究機関及び企業等における研究・教育・研修への利用 及びその他の利用について
7. Z.組織バンクの運営等について
8. [.終わりに
9. 資料1


序文

 移植医療を通して国民の生命を守り、生活の質的向上(QOL)に寄与することは、この分野にたずさわる人々の使命である。既に腎臓、心臓、肺臓、肝臓、膵臓、角膜、皮膚、骨、骨髄、心臓弁等の移植については、国際的には勿論、本邦においても普及し始めて久しい。

 しかし、移植医療には、通常医療としての倫理的諸問題のほか、臓器・組織提供者を必要とするという特殊性があり、それに随伴するドナー側、レシピエント側及びその両者に関わる倫理的な配慮は不可欠である。臓器に関しては「臓器移植に関する法律」の中で脳死下臓器移植に関わる種々の倫理的問題があげられ、その対応を含め言及されている。しかし一方、組織移植における倫理的諸問題の対応に関しての報告書はなく、早急なガイドライン作成が必要である。以上のような観点から日本組織移植学会では、遺体から採取されたヒト組織移植に関する倫理的問題のガイドラインを作成することになった。幸いなことに平成11年度旧厚生省公衆衛生審議会特別部会(組織移植)(委員長 野本亀久雄)において組織移植の倫理指針の試案が残されており、その試案書を基礎に、その後の社会的情勢変化を加味して本倫理指針を作成した。

 以下、本指針は日本組織移植学会における倫理委員会による倫理指針ではあるが、大学等の研究施設のみならず企業への組織の供給も含めて旧厚生省医薬安全局の医薬発第1314号「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び安全性確保について」についても考慮に入れた上で、我が国での組織移植に関わる倫理的問題に広く本指針を使用されることを期待したい。


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 現在、わが国では、ヒト組織のうち皮膚、骨、靱帯、心臓弁、血管、鼓膜、耳小骨等の採取・保存が行われ医療に応用されており、一部では組織バンクとして保存・供給がシステム化されている。一方、遺体からのヒト組織移植に関する法律はなく、「臓器の移植に関する法律」では、同法5条の規定する「臓器」および同法施行規則1条の規定する「内臓」のみが対象となっている。この法律においてヒト組織の移植に関しては、「法律」の運用に関する「指針(ガイドライン)」で、「通常本人又は遺族の承諾を得た上で医療上の行為として行われ、医療的見地、社会的見地等から相当と認められる場合には許容されるものであること」(第11.6)という基本的な考え方のみが示されている。

 本ガイドラインでは組織利用における倫理的妥当性及び安全性に係る問題について一定の指針を定めると共に、採取されたヒト組織が研究及び医療等に利用されるための条件案を合わせて加えた。ヒト組織の移植あるいは研究への利用を目的とした組織バンクにおいても当然その運用の公共性、透明性を十分に配慮し、倫理的妥当性及び具体的な安全性の確保がなされなければならない。(参照:ヒト組織を利用する医療行為の安全性確保・保存・使用に関するガイドライン)

 今後、本指針に沿って組織バンクが適正に運用され、ヒト組織の利用に対する社会全 体の理解と信頼が深められることが期待される。なお、本ガイドラインの最後に使用された用語の定義を付記したので参照されたい。

T.基本方針

 本ガイドラインは原則として死体から採取されたヒト組織の移植あるいは研究機関、一般研究者及び企業に関する倫理的諸問題のガイドラインであり、ヒト組織の取扱いにあたり、人間の尊厳の尊重と人権の保護を前提として、バンキング業務の公共性、透明性が確保され、同時に作業に従事する者の安全が確保されていなればならない。

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U.対象の組織

 ヒト組織として本ガイドラインが対象とするのは、心停止後に採取される皮膚、心臓弁、大血管・末梢血管、骨・靭帯、鼓膜・耳小骨、膵(ランゲルハンス)島、気管・気管支、網膜とし、生体からの採取組織は含まない。

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V.ヒト組織を利用するに当って遵守すべき基本原則

 ヒト組織を利用するにあたっては、倫理的妥当性及び安全性を確保するために次の7つの原則を遵守しなければならない。
 
(1) ヒト組織の提供に係る任意性の確保
  ヒト組織の提供は、ドナー本人の、又はその死後の提供である場合には遺族の自由意思に基づくものであり、提供の意思決定の過程において、ドナー側に不当な圧力がかかることがあってはならない。

(2) ヒト組織の採取及び移植の際の十分な説明と同意(インフォームド・コンセント)
  ドナー又はその遺族がヒト組織提供の意思決定をするにあたっては、提供の手続、採取の方法、利用目的等についての説明が十分に行われなければならない。
又、レシピエント側がヒト組織の移植を受けるかどうかについて意思決定をするにあたっては、当該移植の有効性及び潜在的危険性等についての説明がレシピエント側に十分に行われなければならない。

(3) ヒト組織の提供の社会性・公共性及びドナーの尊厳の確保
  ヒト組織の提供は、ドナー側の善意に基づいた社会全体に対して行われる公共性を持った崇高な行為である。提供を受けた組織バンク及び移植施設等は、ドナーの尊厳を確保し、ドナー側の意思と社会に対する善意を尊重して組織を取り扱わなければならない。
又、提供がなされた後、ドナー側は提供したヒト組織について財産上の権利を主張することはできない。


(4) 無償の提供
  ヒト組織の提供は無償で行われるべきものである。ヒト組織の採取にあたっては、その対価として財産上の利益をドナー側に供与してはならない。又、組織バンクは非営利・公共的な活動団体として、採取したヒト組織を移植施設等に提供するにあたって、その対価としての財産上の利益供与を受けてはならない。

(5) 提供されるヒト組織に係る安全性及び移植の有用性の確保
  組織バンク事業に携わる者及び施設は、移植等に利用されるためのヒト組織がレシピエントの治療への貢献という目的に基づいて提供されるものであることに鑑み、ヒト組織の採取、処理、保存又は移植における安全性並びに移植における有用性を確保しなければならない。又、移植により伝播する可能性のある感染症等に係る情報の収集に努めなければならない。

(6) 個人情報の保護
  組織バンク事業に携わる者及び施設は、ドナー側若しくはレシピエント側を特定することにつながる情報、彼らが知られることを望まない情報を厳格に管理し、それらの情報が漏洩することがあってはならない。又、ドナー側に関する情報とレシピエント側に関する情報が相互に伝わることがあってはならない。

(7) 情報公開
  組織バンクは、社会的・公共的な活動主体として、個人情報の保護に留意しつつ、その活動全般について広く社会一般に情報を公開する体制を整備しなければならない。

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W.ヒト組織の採取に関する基本原則

 ヒト組織を利用するにあたっては、倫理的妥当性及び安全性を確保するために次の7つの原則を遵守しなければならない。

(1) ヒト組織の採取における説明と同意のあり方

1)
移植等を目的としたヒト組織の採取にあたっては、説明を受ける側の立場に十分に配慮した説明を行うこと。採取前に、予め当該ヒト組織の提供についてドナー又は遺族から自由意思に基づいた同意を書面にて得ること。具体的には下記の内容について十分に説明した上、説明の内容が記載された書面をドナー側に示すと共にそれを交付することも併せて行うこと。
@
ヒト組織の提供の手続、採取の方法、提供後のドナーの状態等についての説明
A
ヒト組織の採取の目的
採取は移植を一義的な目的として行われることの説明と移植に用いられなかった場合の取扱い(大学、研究機関及び企業における研究・教育・研修等への利用、及びその他の利用、焼却処分)についての説明
B
ドナースクリーニングに係る検査結果の開示
希望があれば検査結果をドナー側に知らせる用意があることの説明
C
ヒト組織の採取が行われた後の取扱い
Z-(8)に定める倫理委員会等において正当と認められた場合を除き採取された組織は返還されないことの説明

2)
ヒト組織の提供に係る説明にあたっては、ドナー側の任意性の確保に配慮し、説明の途中であってもドナー側が説明の継続を拒んだ場合は、その意思を尊重すること。特に死後間もない場合には、遺族のおかれている状況に鑑み、その心情に配慮しつつ十分に説明を行うこと。
説明にあたっては、同意を拒否する権利があること及び拒否することによりドナー側が不利益を受けないことを明確に説明すること。

3)
ドナー側に対する説明は、説明に係る中立性を堅持するため、組織移植コーディネーター等の組織バンクに所属する者が説明を行うこと。それらの者が説明を行わない場合は、ドナーの治療を担当していない(あるいは、いなかった)者が説明を行うことが望ましい。

(2) ヒト組織の採取手続

1)
移植を目的としたヒト組織の採取は、原則として、Y-(1)に定めるドナー側への説明が適切に行われ、かつ次の条件がすべて満たされた場合にのみ許容されるものであること。
@
ドナー本人(生前からの提供の意思表示がされている場合)又はドナーの遺族が、ヒト組織の採取及び採取されたヒト組織の取扱いに同意していること
A
死者に対する礼意が十分に保持されていること等、社会的見地からも相当と認められるものであること

2)
ドナー本人が生前にヒト組織の提供に対し拒否の意思を表示していた時は、例え遺族の同意があっても当該ヒト組織を採取してはならない。

3)
ヒト組織の採取は医師が行うこと。死体からの採取に当たっては、死者に対する礼意を失わないよう特に注意すること。

4)
ヒト組織の採取にあたっては、可能な限り無菌的な条件下で行い、採取の過程における微生物等による汚染を防止すること。

5)
組織バンク事業に携わる者は、ヒト組織の提供を受けること若しくは受けたことの対価としてドナー側に財産上の利益を供与し、申込み、又は約束をしてはならない。

6)
組織バンク事業に携わる者は、ドナー側を特定することにつながる情報又はドナー側が知られることを望まない情報を厳格に管理し、それらの情報が組織バンク事業に携わる者以外の者に漏洩することがあってはならない。

(3) ドナー適応基準等のあり方

  採取されるヒト組織は、特定の疾患又は状態にドナーが該当する場合には利用しないこと。又、ドナーに対する詳細な問診、視診、触診等を可能な限り行い,ドナー家族にも問診を行う。あわせて診療録の確認を行うこと。病理(解剖)所見等がある場合にはその結果も参考とすること。なお、各種検査等の方法については、その時点で最も適切とされる方法を採用すること。
又、問診、検査等の項目及びその方法については、感染症に関する新たな知見及び学問・技術の進歩に鑑み、組織バンクにおいて随時見直しを行うこと。なお、基準の見直し、移植に係る感染症情報の収集、評価等について、関係学会等の専門家組織による協力・参画が望まれる。

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X.ヒト組織の移植施設への提供及び移植への利用について
 
(1) 組織バンクがヒト組織を移植施設に提供する際には、明文化された基準に基づき公正に提供を行うこと。その際、レシピエントの選択において移植の機会の公平性を保つように配慮すること。

(2) 組織バンクがヒト組織を移植施設に提供する際には、実施されたドナー・スクリーニング検査の項目、検査方法及びその結果、処理方法等について情報提供を行うこと。

(3) 組織バンクにおいては、ヒト組織の移植施設への提供に係る記録をプライバシーの保護に留意しつつ保存・管理し、当該ヒト組織のドナー、処理・保存過程及びレシピエントの記録について必要に応じて確認できる体制を整備すること。又、各記録を保存する期間は最低10年間とするが、当該期間の経過以降も可能な限り保存すること。

(4) 移植施設においてヒト組織を移植に用いる際には、予めレシピエント側の同意を得ること。又、同意を得るため,当該施設の担当医師により当該ヒト組織の移植に係る潜在的危険性を含めた安全性、移植の有用性等についてレシピエント側に十分説明すること。

(5) 移植施設においてヒト組織を移植に用いた場合には、診療録等に提供を受けた組織バンク名、ヒト組織の識別番号等を記録し、必要に応じて遡及調査及び追跡調査を行うことが可能となるような体制を整備すること。

(6) 組織バンク及び移植施設においては、レシピエント側を特定することにつながる情報又はレシピエント側が知られることを望まない情報を厳格に管理し、それらの情報が漏洩することがあってはならない。このためにZ-(4)に記してあるレシピエント情報を管理する情報管理者を必ず置く。尚、情報管理者は組織バンクの実務スタッフ以外で、事務担当者、施設の代表者などの責任者がこれに当たる。

(7) 組織バンクは、非営利・公共的な活動団体として移植施設に対してヒト組織を提供すること若しくは提供したことの対価として移植施設、患者等から財産上の利益を受け、又はその要求若しくは約束をしてはならない。
ただし、通常必要である範囲の交通費、通信費、コーディネーションに係わる費用、ヒト組織の採取、保存又は移送等に係る経費・費用については「対価」とみなさない。

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Y.研究機関及び企業等における研究・教育・研修への利用 及びその他の利用について
 
(1) 組織バンクは、移植への利用を主たる目的としてヒト組織の提供を受けるものである。しかしながら、ヒト組織を移植に用いることができない場合又は家族の希望がある事例において、家族の承諾が別途承諾書によって得られた場合には当該ヒト組織を研究機関及び一般研究者(企業を含む)における研究・教育・研修等への利用目的のために提供することができるものとする。

(2) 研究とは、ヒューマンサイエンス振興財団、大学等の研究機関、医療機関もしくは企業の一般研究者により行われ、又はこれらの者の協力により行われる疾病治療に役立つ医学研究とし、教育・研修はヒト組織の処理技術に係る研究並びに組織バンクの技術者の技術習得・向上を目的とした研修とすること。

(3) 組織バンクが、採取したヒト組織を移植医療に関する研究機関あるいは研究目的で企業に提供する際には、Z-(8)に定める倫理委員会等において当該研究の内容の妥当性について確認し、提供の可否を判断すると共に、その判断の過程を明確にすること。

(4) 研究・教育・研修以外の目的でヒト組織の提供を受ける企業は、生物由来製品等の製造等を行う企業に限り、さらにその企業はY-(8)に定める諸要件を備えた企業であること。提供する際には、Z-(8)に定める倫理委員会等において内容の妥当性について確認し、提供の可否を判断すると共に、その過程を明確にすること。

(5) 組織バンクより提供され、企業で用いられるヒト組織については、提供を受けた
企業はその提供を受けた日時、提供を受けた機関名、利用目的等の記録を作成・保存すること。

(6) 組織バンクが、採取したヒト組織を企業に提供する際には、Z-(8)に定める倫理委員会等において当該使用目的の妥当性について確認し、提供の可否を判断するとともに、取扱い主体、提供数の記録を作成・保存すること。

(7) 組織バンクは、採取したヒト組織を企業に提供する際にもX-(7)、Z-(10)に定める様に非営利・公共的な活動団体として、いわゆる「対価」とみなされないヒト組織の採取・保存又は移植等に係わる経費・費用以外は請求してはならない。

(8) 企業が備えるべき要件
@
日本組織移植学会が定めるヒト組織利用のガイドラインの為の要件を満たし、かつ日本組織移植学会からヒト組織の提供許可を受けていること。
A
「細胞組織利用医薬品等の取扱い及び使用法に関する基本的な考え方」(旧厚生省医薬安全局、平成12年12月26日)の規定を遵守した運営がなされることを担保している企業であること。
B
日本組織移植学会に所属している企業であること。

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Z.組織バンクの運営等について

 組織バンクを運営する上においては、社会に対する善意に基づき提供されたヒト組織について、その安全性の確保及び移植における公平性に十分に留意しつつ、責任を持って安定的かつ迅速に供給する体制が整備されている必要があること。特に次の点について整備されるべきであること。

(1) 組織バンクの代表者が明確であり、非営利・公共的な活動団体として事業運営に
責任を持てる体制であること。特に、複数の医療機関が連携して組織バンクを設置運営している場合には、連携するすべての医療機関の合意があり、組織バンクとして一体的かつ責任ある運営が行われること。

(2) 事業運営・実施要綱が書面で作成されているなど、組織バンクの運営の枠組みが明確になっていること。

(3) ヒト組織の採取を行う際の適切性を担保するための体制を整備すること。
特に、
@
下記(8)に定める倫理委員会等において、ヒト組織の採取に係る倫理的妥当性及び安全性について事前に検討され承認されていること。又、組織バンクの設置・運営を行っている医療機関以外の機関でヒト組織の採取を行う場合には、採取を行う医療機関の十分な理解と協力を得られること。
A
組織バンクにおいて、ヒト組織の採取に係る手続等に関する記録が作成・保存され、下記(8)に定める内部または外部倫理委員会等において定期的に内容の確認が行われること。

(4) ドナー及びレシピエントの個人情報を保護するための個人情報管理責任者が設置され、情報の管理方法が明確になっていること。

(5) 自ら供給したヒト組織の移植事例に関し、移植を受けた患者のフォロー・アップ情報の収集・管理について責任を持って行うこと。

(6) ヒト組織の採取・処理・保存に係る品質管理責任者が設置されていること。
又、関係機関と連携の上、ヒト組織の処理・保存に携わる技術者の教育・研修を定期的に行うこと。

(7) 組織バンク事業の運営にあたっては、その透明性を確保すること。特に、組織バンク事業の実施状況・実績(採取組織の種類、量、保存実態、利用の実態等)については書面で常備し、求めに応じ開示すること。

(8) 組織バンクの運営にあたっては、組織バンクが自ら倫理委員会等の団体・事業体全体としての意思決定を行う機関を設置すること。又は組織バンクを設置・運営する医療機関に既存の倫理委員会等の当該施設全体としての意思決定を行う機関がある場合はそれを活用する事ができ、ヒト組織の採取に係る手続の評価を行う。さらに、採取されたヒト組織が移植に用いられなかった場合の研究・教育・研修並びにY-(4)に規定された利用に関わる承認等を行う。

(9) 上記(8)に定める倫理委員会等において、組織バンク事業の運営全体に係る倫理的事項についても基準を定め、事業に関わる者に対して周知徹底が図られていること。

(10) 採取・処理・保存を行ったヒト組織を移植施設やその他の機関に提供する場合において、通常必要である費用(交通費用や処理費用、人件費用等)を請求する場合においても、非営利性を保ちそれらの費用を不当に高く見積もってはならないこと。

組織バンクを通じたヒト組織の提供と利用には一般市民が関与することから、そのシステムの定着には社会全体の理解が欠かせない。そのためにも、組織バンクを始めとする全ての関係者は、その運用において本ガイドラインにより定められた指針を遵守し、ヒト組織の利用について倫理的妥当性及び安全性が確保されることが重要である。もしこれに違反する場合には、日本組織移植学会として厳重に処分することを明記する。

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[.終わりに

 本ガイドラインは、臨床上の必要に基づき既に行われているヒト組織の移植目的での利用を中心として書かれたものであるが、今後、自主的な取り組みにより組織バンクを始めようと考えている施設に対してもその遵守すべき指針も示した。又、再生工学技術の進歩発展に伴いヒト組織の利用は移植に留まらず大きく変化することが予想され、今後ヒト組織が産業応用につながる可能性があること、及びヒト組織を用いた研究成果が広く有効利用されることがあることを視野に入れたルール作りも併せて本倫理委員会で検討した。

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資料1:本ガイドラインにおける用語の定義

(0) 「バンキング」
  ヒトの死体又は生体から採取した組織を保存し必要に応じ供給するシステムで、 採取、保存、供給の作業の総称である。

(1) 「ヒト組織」
  ヒトの死体又は生体から移植への利用を主な目的として採取される対象となる組織をいう。ただし、本ガイドラインにおいて想定しているのは、現在組織バンクにより移植への利用が行われている皮膚、骨、靱帯、心臓弁、血管及び鼓膜、耳小骨等である。又、今後対象とされると思われる肝細胞、膵(ラ氏)島細胞、各組織の細胞等もこれに含み、既に法令等の規制の下に利用されているものについては想定されていない。

(2) 「組織バンク業務」
  ヒト組織の採取、処理、検査、保存、提供及び情報の管理・提供に係る一連の作業を担う機関が行う業務。

(3) 「組織バンク」
  組織バンク業務の運営の中心となる、単一の医療機関又は連携する複数の医療機
関によって設置・運営されている非営利の団体・事業体をいう。なお、組織バンク業務に携わる者には、当該団体・事業体に加え、ドナー側が入院していた(している)施設も含まれる。

(4) 「最小限の操作(Minimal Manipulation)」
  ヒト組織に対する処理であって、そのヒト組織の本来の性質・機能を損なわない  範囲の処理をいう。具体的には、ヒト組織の切断、抗生剤での洗浄、ガンマ線や加温等による滅菌、細胞分離、凍結・冷凍保存等の処理が含まれる。

(5) 「ドナー」
  移植等へ利用するための「組織」を提供する(可能性のある)ヒトをいう。

(6) 「ドナー側」
ドナー又はその家族若しくは遺族若しくは本文中4の(2)の2)の@に定める代諾を行う(行った)者をいう。

(7) 「ドナー・スクリーニング」
ドナーが移植等へ利用されるヒト組織を提供するための適格性を満たしているかどうかを決定するための検査及び診断をいう。

(8) 「レシピエント」
ヒト組織を用いて移植医療を受けた、あるいは受けることが医療上必要であると(医師によって)判断された患者のことをいう。

(9) 「レシピエント側」
レシピエント又はその家族をいう。

(10) 「微生物クリアランス」
加温殺菌、抗生剤による処理等により、細菌・真菌・ウイルス等の微生物の不活化を行うことをいう。

(11) 「インフォームド・コンセント」
ヒト組織の提供又は移植に関する十分かつ適切な説明を受け、その目的、方法、予測される結果・不利益等を理解し、自由意思に基づいてヒト組織の提供又は移植に同意することをいう。




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