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ヒト組織バンク開設における指針



Japanese Society of Tissue Transplantation


     「ヒ ト組織バンク開設における指針」







目次



1. はじめに
2. 本指針の目的
3. 組織バンクの基本理念
4. 組織バンクの組織または施設としての要件
5. 説明と同意のあり方
6. ドナーの適応基準
7. ヒト組織の採取
8. 採取されたヒト組織の安全かつ有効な保存
9. ヒト組織の移植施設 への供給
10. 終わりに



1. はじめに


 日本組織移植学会ではガイドライン作成委員会において「ヒト組織を利用する医療行為に関するガイド ライン」を制定した。このガイドラインは人体組織の治療への応用に関し、学会として今日的なあり方をまとめたものである。学会に参加する施設ならびに組織 の保存を行なう施設では、このガイドラインに従い、公平、公正でかつ透明性の高い信頼される組織バンクの運営が行われることが望まれる。一方で各組織バン クにおいて施設の運営や開設についての具体的な指針についてはまだ定められたものはない。

 平成12年12月26日、厚生省医薬安全局より医薬発第1314号「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び安全性確保につい て」が示され、企業ならずとも日本組織移植学会に参加するバンクもこの基準を遵守する必要があることを認識している。更に平成14年には、牛由来製品に対 するBSEなど生物由来医薬・医療材料に対する規制が強化された。いわゆる改正薬事法である。この中では精度管理に努めることや標準的作業手順書 (SOP)を作成することが記されている。我々日本組織移植学会レジストリー委員会ではこの様な状況に鑑み、ガイドライン作成委員会で作成された「ヒト組 織を利用する医療行為に関するガイドライン」を基に、各組織バンクにおける運営・開設に必要とされる指針を作成した。本指針を基に高い精度での品質管理が 出来る組織バンクが運営される事を望むものである。

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2. 本指針の目的


 本指針の目的は、日本組織移植学会ガイドライン作成委員会において作成された「ヒト組織を利用する 医療行為に関するガイドライン」を順守し、日本において組織バンクの運営及び設置における安全性、有効性並びに倫理的、技術的妥当性を担保することにあ る。

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3. 組織バンクの基本理念


 ヒトから採取した組織を移植 に用いるに当たっては、その倫理的妥当性を担保するために以下の7つの 基本理念が守られていることを確認する必要がある。
1) インフォームドコンセントの徹底がされていること


ヒト組織の摘出のみならず移植に当たっ ても、ドナー側及びレシピエント側に対して、十分な情報を提供した上で了承を得ていること。

2) ドナーへの礼意の保持がされていること


提供を受ける施設においては、ドナーの 尊厳を確保しつつ、ヒト組織の提供に係るドナー側の意思と社会に対する善意を尊重し、組織が取り扱われていること。

3) 任意性の担保がされていること


ヒト組織の提供の説明に当たっては、提 供に先だって行われる説明を聞くことを強制していないこと。また、意思確認の過程において不当な圧力がかかることのないよう、原則としてドナー本人(又は 死後の提供である場合には遺族)の自由意思に基づく決定がなされていること。

4) 無償の提供であること


ヒト組織の提供はいわば社会に対して善 意・無償で行われる公共性を持った行為であり、提供されたヒト組織については個人の権利、利益を主張していないこと。但し、組織バンクでは、ヒト組織を移 植施設に提供する場合に必要とされる経費(採取、保存、供給費用、人件費、交通費等)を請求する事が出来る。この際、組織バンクは非営利組織、または団体 であることを十分認識したうえ、営利を目的とした請求をしてはならない。

5) 匿名性の確保がされていること


ヒト組織バンクの運営に際して、ドナー 側及びレシピエント側の氏名や年齢などの個人情報が流出しプライバシーが侵害されていないこと。

6) 善意の保持がされていること


ヒト組織を提供された施設は移植に供す る際、提供されたヒト組織を同意者の内容に沿って倫理的に正しく取り扱い、提供者の善意が生かされるよう最善をつくしていること。

7) 情報の公開


情報の公開が適切に行われていること。

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4.組織バンクの組織または施設としての用件


 組織バンクの施設を運営する 場合、施設として以下のあり方を満たしている必要がある。
1) 組織バンクの代表者が明確であり運営の すべてに責任を持っている体制であること。


2) 組織バンクの組織運営・実施要項を書面 で作成されていること。


3) 組織バンクの運営方針を決定する委員会 等を定期的に開催し、議事録が保管されていること。


4) 組織バンクの会計が管理され、書面にて 記録を残しておくこと。定期的に監査を受ける体制が出来ており、求めに応じて開示される体制であること。但し、研究 費等で賄われている場合は、その収支、決算を明示し記録に残してあること。


5) 組織バンクの事務体制が明確になってい ること。


6) 個人情報を保護するための体制の整備 (情報管理責任者の設置、保存・管理体制の文書化等)がなされていること。


7) ヒト組織の採取、保存、供給のすべてに わたり管理責任が明確にされていること。


8) 組織バンクを行なうにあたって供給の公 平性及び採取・保存の際、技術の適格性を中立的な立場から、監査を定期的に受けていること。


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5.説明と同意のあり方


 移植を目的としたヒト組織の 採取における説明と同意については、以下の 条件を満たしている必要がある。
1) ドナー本人又はドナーの遺族(死後の提供の場合)から文書による承諾を得た上で組織の採取が行われていること。


2) ヒト組織の提供に係わる説明に当たって は、基本理念の3)に示されている様にドナー側の承諾の任意性に配慮し、説明を聞くこと及び提供に係わる承諾を強要 するような言動がないこと。また、説明の途中でドナー側が説明の継続を拒んだ場合は、その意思を尊重していること。説明に当たっては、同意の拒否及び撤回 の権利があり、拒否又は撤回することにより当該者が不利益な扱いを受けないことを明らかにしていること。


3) 上記ドナー側に対する説明は、中立性を 求める観点から、コーディネーターが説明を行っていること。コーディネーターに該当するものが不在の場合は、組織採 取に当たる医師が説明を行なうことができるが、この際は第三者(組織採取病院医師、看護師等)が必ず立ち会っていること。


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6.ドナーの適応基準


 特定の疾患又は状態にドナーが該当する場合には、ヒト組織を採取あるいは 利 用してはならない。また、ドナーに対する詳細な視診、触診を可能な限り行い、家族、遺族にも問診を行なう必要がある。あわせて診療録の確認を行なうべきで ある。
 また、問診、検査などの項目及びその方法について随時見直しが行なわれているか確認する必要がある。
1) ドナーの適応基準の項目は必ず問診や診療録から確認を行っていること。ま た、組織採取時に血清学的・細菌学的検査が行われていること。加えて、病理解剖が ある場合にはその結果を適否の参考としていること。

2) 異状死体(外因死)の場合、警察医ないし監察医による検視が終了しているこ と。

3) 各組織に対して適切なスクリーニング検査を行なっていること。

4) 各種検査の方法については、その時点で最も適切とされる方法を採用するこ と。

5) 「ヒト組織を利用する医療行為に関するガイドライン」に示されている不適応 基準を確認していること。

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7.ヒト組織の採取


 ヒト組織採取を行なう際、組織バンクでは操作や技術の妥当性を維持するた めの体制が整備、維持されている必要がある。
1) ヒト組織の採取を行なう医師、採取に当たる医療機関においては、施設又は組織内の倫理委員会等におい てヒト組織採取の手続・方法等について事前に承認されており、ヒト組織採取について協力を行なう体制が確立されていること。

2) ヒト組織採取の際には、医学的に適切な技術が維持されており、かつ死体に対 する礼意が保持されていること。

3) ヒト組織の採取に当たってはそのクオリティを維持するべく器材の準備と技術の習得を行なっているこ と。

4) ヒト組織の採取に当たっては、提供施設に迷惑のかからない様な器材準備を行なうこと。

5) ヒト組織の採取に当たっては、可能な限り無菌条件下で行い、採取の過程における微生物等の汚染を極力 防いでいること。

6) ヒト組織の採取にあっては、ドナー病院長又は責任者の了承を得ていること。

7) 摘出記録の保管・管理について組織バンク又はネットワークが責任を持って保管・管理していること。

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8.採取されたヒト組織の安全かつ有効な保存


 採取されたヒト組織の処理、保存においては、汚染防止及び適切な微生物ク リアランスに努めるとともに、クオリティを落とすことなく、迅速な保存処理を行なうこと。
1) 採取組織の保存過程において、微生物の汚染拡大を極力防いでいること。

2) 保存過程で適切な微生物クリアランスを実施すると 共に、処理の各段階で適切な試験、検査を行なうこと。

3) 組織の処理・保存を行なう作業環境については、一定の清浄度が保たれるよう に留意している事。また、定期的に作業環境の確認検査が行なわれていること。

4) ヒト組織バンクにおける保存組織のクオリティを保つ為の体制が整備されてい ること。

5) 保存記録を保管・管理し、要請に応じていつでも提供出来るように努めるこ と。

6) 保存期録・使用(移植)記録を20年間保管すること。

7) 採取されたヒト組織について、定められるものに関しては一定期間の保存年限 を定め、当該期間を経過した保存組織については移植に用いないこと。

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9. ヒト組織の移植施設への供給


 ヒト組織の供給にあたり、クオリティコントロールに配慮がなされ、公平な 供 給がなされている必要がある。
1) ヒト組織を医療機関に供給する際に公正な供給が行われていること。レシピエ ントの選択において移植の機会の公平性を保つように配慮していること。

2) 組織バンクが組織を提供する際には、実施したド ナー・スクリーニング検査の項目、検査方法及びその結果、処理方法等について併せて情報提供を行ってい ること。

3) 組織バンクにおいては、プライバシーの保護に留意しつつ、提供に係る記録  を保存・管理していること。必要に応じて提供した組織のサンプルや血清の一 部を保存しておき、再検査を行なう体制を整えていること。また、処理・保存過程及びレシピエントの記録について随時確認できる体制を整備していること。

4) 移植施設においては、供給したヒト組織の移植を受けた患者の結果、副作用な どを常に注意していること。

5) 必要に応じて追跡調査を行なうことが可能となるような体制を整備しているこ と。

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10. 終わりに


 今後、わが国における組織バンクの活動が定着し、活発に活動するようになれば基礎的、臨床的研究が これまで以上に進み、それがひいてはヒト組織を用いた医療技術全般の向上に資することになると考える。当指針に沿って、公平、公正な組織バンクの運営がな されることが将来の礎になり、我が国の組織移植医療の発展に継ぐものである。

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