Session1 「システム」
演題1. ドナー確保のために組織バンクが果たす役割
〜神戸大学膵島移植班へのドナー情報からの検討〜
大河原弘達2)、谷岡康喜1)2)、酒井哲也1)、黒田嘉和1)2)
1)神戸大学大学院外科学講座
2)神戸大学医学部21世紀COEプログラム
(目的)ドナーの確保は移植医療の発展には不可欠である。今回、神戸大学膵島移植班(膵島バンク)に寄せられたドナー情報を分析し、ドナー確保に向けバンクがどのような取り組みをすべきかを検討した。
(方法)膵島移植においては、ドナー発生地域にブロック制がとられており、神戸大学は、近畿(大阪、兵庫、和歌山)と中国・四国地方を担当している。またドナー情報は、ご協力いただいている日本臓器移植ネットワーク(JOT)あるいは府県コーディネーター(Co)から西日本組織移植ネットワークを介して寄せられる。平成16年4月から平成19年3月までの3年間のドナー情報とこの間の啓発活動について検討した。
(結果)この3年間に近畿(大阪・兵庫・和歌山)地方から20例、中国・四国地方から3例、その他1例の24例のドナー情報を頂いた。このうち実際に提供に至ったものは8例であった。また同じ3年間に組織移植Co等のご協力を得て、近畿30件、中国・四国4件の病院訪問(膵島移植の紹介、ドナー発生時の協力要請等)を行った。提供に至らなかった16例は、医学的理由によるものが12例(感染症:5例、急変:4例、その他:3例)であった。また、ご家族の同意が得られなかったものが4例あり、その内訳は、臓器提供の説明は受けられたが組織提供の説明を希望されなかった:3例、組織提供の説明を受けられたが提供を希望されなかった:1例であった。提供症例8例は、全例が脳外科入院中の患者であった。提供のきっかけは、家族からの申し出が5例、主治医のオプション提示が3例であった。提供病院は、4類型施設が4例に対し、2次救急施設が4例であった。
(まとめ)啓発活動としての病院訪問が情報数確保の一因となった可能性が示唆され、今後は中国・四国地方へも拡大する必要があると思われた。またその際には、脳外科を標榜する2次救急病院に重点をおくことも大切であると思われた。
演題2. 膵島提供時の『I.C一括化』を実現した活動の紹介
金城亜哉1)、岩田誠司2)、中野昌彦1)、松岡信秀1)、
伊東 威1)、新田智之1)、米良利之1)、塚本美保3)、安波洋一1)
1)福岡大学医学部再生・移植医学講座、2)福岡県メディカルセンター、
3)日本臓器移植ネットワーク西日本支部
膵島提供が他の組織提供と異なるのは、臓器提供に付随した場合に限定される点であり、心停止前の情報受信・家族へのインフォームドコンセント(以下I.C)・承諾書の作成が必須条件となる。
西日本および東日本組織移植ネットワークの管轄地域において、家族が膵島提供の説明を希望するか否かの確認は、臓器提供のI.Cの際に臓器移植コーディネーター(以下Co)によって行われるケースが多い。家族の意向が判明するのがそのタイミングである以上、組織移植Coはそれから正式に連絡を受けることとなり、膵島提供のI.Cは、臓器提供のI.Cと時間的隔たりをもって行われる状況になりがちである。しかしこれは、家族や提供病院に提供への負担感を増大させる要因に他ならない。
福岡県においては組織移植Coが、臓器移植Co.や提供病院に対して、I.Cを一括して行えるよう、その協力体制を構築するための活動を行ってきた。それにより、これまでの全対応症例においてI.Cを一括して行え、その結果全例において膵島提供の承諾をスムーズに頂くことができた。また家族や提供病院から、膵島提供に伴って新たに大きな負担が生じたという報告も挙がってきていない。
この、臓器提供と膵島提供の『I.Cの一括化』を目的とした活動を紹介する。
演題3. 千葉県における膵島提供増加のための取り組みと課題
宮崎麻里子1)2)、鈴木亜希子2)、剣持 敬3)4)、丸山通広3)4)、岩下 力3)4)、
西郷健一3)4)、圷 尚武3)4)、大月和宣3)4)
1)国立病院機構千葉東病院看護部、2)千葉県臓器移植コーディネーター、
3)同外科、4)同臨床研究センター
千葉県においては、臓器・組織提供のスムーズなIC取得および臓器・組織提供数増加を目的として、JOT千葉県コーディネーターが2006年に組織移植学会認定の組織移植コーディネーター資格を取得した。千葉県の献腎提供数の増加に伴い、当院の献腎移植数は2004年4例、2005年5例に比較し、2006年11例と倍増した。また献腎提供の際の、膵島提供の承諾率も2004年75%、2005年66%であったのに対し、2006年には全例(100%)の承諾をいただいた。膵島移植にはドナー数の増加が必須であると同時に、ご承諾いただいた膵島移植の為の膵臓を、最良の状態で摘出、移植へとつなげる為のドネーションが重要である。しかしながら承諾例のうち、開腹後摘出までに至らない事例も45%にみられた。主な原因としては、非カニュレーション例の温阻血時間や長い死戦期、低血圧などによる膵の虚血障害にともなう膵の浮腫、高アミラーゼ血症、高血糖、灌流不全等であった。
ドナー、ドナー家族の意思を移植につなげることがコーディーネーターの役割であり、その為には、最良の状態での臓器、組織提供が重要であるが、膵島提供には可及的に心停止前のカニュレーションの実施、腎摘出チームとの連携による膵の効率的冷却、灌流、レスピレータオフの導入等の処置が必要と考えられた。またドナーの適応基準は定められているものの、ドナーの死線期における臓器の障害の程度、種類などの的確な評価、判断を行う為の方法は示されておらず、コーディネーターにも把握可能であるドナー膵評価の指標が望まれる。
膵島移植医療定着には、ドナー数の確保が最重要であり、臓器・組織一括コーディネートは、ご家族、提供施設の負担の軽減の為には、有効な方策である。今後は、承諾されたドナーからの提供膵を摘出、分離、移植につなげてゆくため、コーディネーター、摘出医、膵島移植医のチームワークが重要である。
演題4. 西日本組織移植ネットワークに寄せられたドナー情報の分析
〜提供に至らなかった症例の検証〜
大河原弘達1)2)、増谷友紀1) 3)、青木 大1)、渡邉和誉1)、辻村敏明1)2)、庭屋和夫 1)3)、
中谷武嗣1)3)、黒田嘉和1)2)、北村惣一郎1)3)
1)西日本組織移植ネットワーク 2)神戸大学医学部COE 3)国立循環器病センター
組織の提供確保は、組織移植を確立する基本要素であり、西日本地域での組織提供をより円滑にすべく、2004年4月に西日本組織移植ネットワークを設立した。組織移植コーディネーターを国立循環器病センター(大阪府)と神戸大学(兵庫県)に各1名設置し、同年11月より活動を開始した。当面は近畿2府4件におけるドナー情報へ対応し、中国、四国、九州、沖縄地方等のドナー情報は状況に応じて対応している。また、2006年10月には福岡県に組織移植コーディネーター1名が設置され、同地区のドナー情報へ対応するようになった。
今回、当ネットワークに寄せられたドナー情報のうち、提供に至らなかった情報を分析し、提供数増加に向けての糸口を検討した。
活動開始から2007年4月までに82件のドナー情報が寄せられ、うち27件が提供に至った。全ドナー情報82件のうち、心停止前情報が66件(提供22件)、心停止後情報が16件(提供5件)であった。提供に至らなかった55件の内訳は、医学的な理由から適応外となった症例が26件、家族の同意が得られなかった症例が18件、距離的、時間的な問題で対応が困難であった症例が4件、その他7件であった。同意が得られなかった症例18件のうち11件では、臓器提供の説明を受けた後、さらに組織提供の説明を受けることを希望されなかった。
今回の分析から、臓器提供の説明とは別に組織提供のための時間を設ける事は家族にとって大変な負担であり、更なる工夫が必要であると考えられた。
演題5. 日本臓器移植ネットワーク東日本支部に連絡が入った
臓器・組織ドナー情報の分析(2006年)
芦刈淳太郎、大宮かおり、菊池雅美、小野 都、上野秋花、田口涼子、中村善保、飯野靖彦
社団法人日本臓器移植ネットワーク
【背景】提供病院、警察や患者家族などから日本臓器移植ネットワークには、昼夜を問わずドナー情報の連絡が入るが、コーディネーターが情報を聞き取った上で、臓器や組織提供適応の可否について判断し対応しているところである。しかしながら、必ずしも全ての情報が臓器や組織提供に結びつくわけではなく、提供に至らない事例も多い。本発表は2006年に日本臓器移植ネットワーク東日本支部で連絡を受けたドナー情報を調査し分析したので報告する。【対象】2006年1〜12月の1年間で日本臓器移植ネットワーク東日本支部に連絡のあったドナー情報182件を対象とし分析を行った。【結果】心臓停止後の腎臓提供に至った事例は45件、脳死下臓器提供に至った事例は5件であり、臓器提供に至った事例の合計は50件(27.5%)であった。さらに、角膜提供に至った事例は76件(41.8%)、心臓弁・血管提供に至った事例は23件(12.6%)、皮膚提供に至った事例は19件(10.4%)、膵島提供に至った事例は11件(6.0%)、骨提供に至った事例は1件(0.5%)であり、組織提供に至った事例の合計は85件(46.7%)であった。臓器・組織のいずれも提供に至らなかった事例は79件(43.4%)であり、医学的適応外、家族の承諾得られず、心停止後1日以上経過、司法解剖などの理由であった。【考察】連絡を受けたドナー情報の6割近くが臓器や組織の提供に至っているが、改めてコーディネーション業務の重要性を認識し、今後も引き続き日本臓器移植ネットワークと各組織バンクとの間で緊密な連携を図ることが必須である。
演題6. 組織バンクにおける安全性に対する取り組み
青木大、田中秀治、今川理映子、明石優美、小塚寛太、島崎修次
特定非営利活動法人日本スキンバンクネットワーク事務局
日本スキンバンクネットワークは1994年に東京スキンバンクネットワークとして東京近郊13施設が集まり設立した。近年参加施設も北海道から九州まで全61施設となり、またドナー数、レシピエント数においても年々増加し、社会的認知度も増してきたため、近畿圏で活動していた近畿スキンバンクとも統合し、昨年末に特定非営利活動法人日本スキンバンクネットワークとして法人格を取得し新たな活動を始めるにいたった。設立以来、スキンバンクでは、クオリティの高い皮膚の供給を目指して、ヒトから採取した皮膚を生理的活性を低下させることなく採取、保存、凍結のプロセス経て供給を行っており、精度管理(Continuous Quality improvement プログラム)を実践することにより、より高度なシステムを目指している。
2006年にはスキンバンクとして始めて日本組織移植学会のバンク認定を取得、本年度は先進医療への申請を行ったこともあり、我々組織バンクに求められる社会的責任は大きい。
我々の施設では日本組織移植学会の認定を受けた専属のコーディネーターを3名設置し一連の作業を行っているが、採取組織の保存作業についても我々の施設ではトレーニングされた専門のテクニシャンコーディネーターが行っている。この作業はご提供頂いた組織が種々の感染など起こさないようにバンクのクオリティ保持という観点も非常に重要である。また、人為的な問題のほかに、組織のクオリティアシュアランスの面から見ても設備環境を考えた運営は重要である。
今回、日本スキンバンクネットワークにおける安全性への取り組みと、今後の展望について言及する。
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