Session3 「啓発(1)」

 

演題11. 兵庫アイバンクにおける過去五年間のドナー動向

石原香織、渡邉和誉、吉谷麻衣、山本 節
財団法人兵庫アイバンク

【目的】兵庫アイバンクにおいて過去5年間に提供のあったドナー(提供者)および組織の評価について検討した。
【対象】2002年4月1日から2007年3月31日までに兵庫県内にて行われたドナー84名、提供角膜147眼を対象とした。
【結果】提供を受けた施設のうち4類型施設(脳死で臓器が提供できる施設)からの提供が24%、4類型以外の医療機関からの提供が60%、非医療機関からの提供が16%を占めていた。
4類型施設からの提供の割合については、毎年ほぼ一定である。しかしながら4類型以外の医療機関からの提供は増加傾向にある。また、ドナーの年齢について有意差は認められなかった。
提供角膜の組織評価については、提供年齢が上がるにつれて眼手術歴等が増加するため角膜内皮細胞密度は低下する傾向を示した。
【考察】今回の解析結果では、アイバンクがターゲットとして行う病院開発施設は、4類型以外の医療機関により積極的な病院開発を行っていくことが効果的であると言える。眼球提供が他の臓器・組織提供とは異なり、固形悪性腫瘍(一部除く)でも提供が可能であり、年齢制限がないという点を考慮し、終末期医療がどのような施設で数多く行われ、地域・施設ごとにどのような体制がとられているかをより解析していくことが今後の発展に必須である。

 

演題12.  病院開発のツールとしてのエンゼルメイク

入江真理1)、高橋絹代2) 
1)(財)富山県アイバンクコーディネーター 
2)(財)富山県腎臓バンク県移植コーディネーター

アイバンクコーディネーターとして献眼時に一番気を使うのは、摘出後の顔貌である。ご遺族には、摘出前と摘出後には、通常は、眼貌の変化はほとんどないが、死因、既往歴、治療によりまれに出血あるいは内出血する可能性もあることも含めて説明を行い、提供承諾を得ている。
当初、富山県アイバンクでのエンゼルメイクの導入は、摘出後のトラブルを目立たなくするためであった。しかし、2005年に提供されたドナーに行ったエンゼルメイクがご遺族のグリーフケアに繋がったことを契機に、献眼時には、提供病院とご遺族の了解のもと、エンゼルメイクを行っている。
2005年5月から2007年5月までに献眼者15名と献眼に至らなかった方1名、計16名へのエンゼルメイクを行った。ドナー発生病院で死後のケアとしてエンゼルメイクを行っている施設はなかった。
富山県院内コーディネーター連絡会においては、事例報告をおこなっており、院内コーディネーターへの移植医療の理解を得るような働きかけを行うと同時にエンゼルメイクの有用性についても解説している。
院内コーディネーターからの要請により2006年1月から2007年5月までに4医療機関においてエンゼルメイク講習会を行った。また、本年度は、大学看護学科において、月1回学生へのエンゼルメイク講習の依頼を受けた。現在、県移植コーディネーターと協力してデモンストレーションを含めた講習会を開催している。
これらの事から看護の現場では、「死後の処置」から「死後のケア」へと、臨終時の看護のあり方が考え直されてきており、グリーフケアの一環としてのエンゼルメイクの重要性が認識され始めていると考えられる。
こうした要望の多いエンゼルメイクと移植医療をつなげることは、移植医療の啓発にも有用であると考え、新しい病院開発のツールとして活動しているので報告する。

 

演題13.  角膜提供時におけるドナーおよび家族ケア
〜エンゼルメイクを取り入れて〜

佐々木紀美1)2)、吉江見幸1)、米満ゆみ子1)2)、山内美和子1)、多田明未1)、吉田文恵3)、
田中悦子3)、藤井和代4)
1)恩賜財団 福井県済生会病院 臓器移植院内コーディネーター
2)日本組織移植学会認定コーディネーター
3)福井県アイバンク
4)福井県腎臓バンクセンター 県コーディネーター

【エンゼルメイクとは】
入院患者が亡くなった際に看護師が施す化粧のこと。家族を亡くした時、その表情が穏やかであれば、残された家族の悲しみは和らぐとの思いから“最後のケア”として、全国で取り組まれている。

当院では、平成14年に院内コーディネーター(以下院内CO)を設置以来、年間40眼〜60眼の角膜提供がある。現在、角膜提供のインフォームドコンセントを行う際に、家族からよく質問されることは「眼球摘出後の顔相の変化」である。また、患者が家族に向ける最後の表情は、残された家族にとって一生心に刻まれるものであり、死期を迎えた顔相は、死斑や黄疸が出てたり、やせこけて見える場合があり、家族がショックを受けることも少なくない。死期をきっかけに家族は、患者の体や顔に自らの手で触れることすら躊躇することが多い。
そこで現在、角膜提供後のケアとして院内COによる「エンゼルメイク」をドナー家族と共に行っている。元気だった頃を思い出し、家族と会話をしながら一緒に「エンゼルメイク」を施行する中で、家族が死を受け入れ、‘誰かの目になり再び生き続けていく“との前向きな思いが聞かれ、近年はグリーフケア・フォローアップケアとして欠かせないものとなった。
このように、角膜提供後に「エンゼルメイク」を取り入れることによって、穏やかな表情や自然な顔色を取り戻し、「眼球摘出後の顔相の変化」についての懸念も聞かれることなく、家族からは感謝の言葉を多数聞かれることができた。
組織提供を実施している医療機関でも「エンゼルメイク」を取り入れることで、看取りに対する「質」の向上にも、貢献するものであり院内Coの活動の一つとして、県内他施設においても、奨励をしていきたい。

 

演題14. 兵庫県下におけるターゲット別病院開発

渡邉和誉1)2)、石原香織1)、吉谷麻衣1)、片上千加子1)2)、山本 節1)
1)財団法人兵庫アイバンク、2)神戸海星病院

【緒言】我が国における臓器移植件数の低迷は、法施行以来の課題である。このような状況を打破するため、当バンクでは2000年度よりアイバンク専属のコーディネーター(以下Co.)を配置し、現在2名のCo.で活動している。今回、当バンクにて取り組んでいる病院開発について代表的な3施設を挙げ、現状について報告する。
【施設1】医学部附属病院であり、脳死下臓器提供施設(以下4類型)である。演者が病院長より院内Co.の委嘱を受け、移植医療体制等を院内Co.会議等で随時検討し、執行部会議に提案できる環境下である。4類型であるということもあり、提供環境に応じたシステム作りを心がけている。また、移植医療機関でもあるため、移植診療担当科との交流も必要である。【施設2】4類型ではないが、院長が脳神経外科専門である。心停止後における臓器・組織提供を中心としたシステムを構築中である。【施設3】4類型ではないが、消化器センター、及び角膜センターがある施設である。消化器センターにおいては、悪性腫瘍における終末期患者が多数おり、角膜センターでは、角膜移植を多数行っている。眼球提供を中心としたシステムを構築中である。【施設2】【施設3】は、経営母体が同一であり、初診時に臓器・組織提供意思の把握及び死亡退院時に最終意思確認を行うためのシステムを構築する準備段階である。このシステムを導入することで、臓器・組織提供希望者の意思を埋もれさせないシステムができあがる。これを遂行すれば、臓器移植法第2条の「生存中に有していた自己の臓器提供に関する意思は尊重しなければならない」という項目を達成できるだけでなく、病院における終末期医療の考え方にも活用することができる。また、病院機能評価の項目もクリアできるという様々なメリットがある。
【まとめ】ターゲットをあてて病院開発を行うことは、有効的手段の一つである。Co.は、普段より病院の体型を把握することに努めながら、活動することが必須である。

 

演題15.  医療者による臓器・組織提供意思確認の有効性と、それまでの病院開発

浅水健志、篠崎尚史
東京歯科大学市川総合病院 角膜センター

<緒言>
当院における全死亡例臓器提供意思確認Routine Referral System (RRS)によって、一定割合で献眼・組織提供希望者がいることは、昨年の本学会で報告した通りである。この度、県内他施設において、医療者による提供意思確認の協力を求め、その有効性が確認されたので報告する。また、意思確認に至るまでの病院開発について紹介する。
<方法>
当該施設とは、平成9年より献眼での協力体制を築いてきた。呼吸器内科医の協力により、平成17年度末までに199眼の提供実績があったが、その医師の異動に伴い提供数が激減した。その為、カンファレンス等を通じ内科全 体に協力を求めた。
<結果>
カンファレンス等での呼びかけや、各部署への説明会を実施することで、自主的に意思確認を実施する医療者が現れた。また提供に関わった医療者への報告や、情報共有を欠かさず行うことで、本年2月からの3ヶ月間で7例14眼の献眼を得た。その提供例すべてが、医療者からの意思確認によって提供を決意されたものであった。
<考察>
これらの結果から、臓器・組織提供の意思確認は、だれが実施しようとも提供を希望される方がいることが示唆された。また、意思確認に向けた病院開発は、明確な目標と、的確な戦略に基づいて行うことが必要であると言える。