Session4 「啓発(2)と症例」

 

演題16.  若年層の臓器・組織移植に対する意識調査

池邊紗織1)、占部 憲2)、成瀬康治2)、糸満盛憲2)
1)北里大学病院骨バンク、2)北里大学医学部整形外科

[目的] 臓器・組織移植を普及させるためには、臓器・組織移植に対して国民がどのような意識を持っているかを知る必要がある。本研究では、若年層の臓器・組織移植に対する意識調査を行なった。
[対象と方法] 平均年齢 17 歳の高校 2 年生 1390 人 (男 975 人、女 415 人) を対象とし、アンケート調査を行った。質問は1)臓器提供意志表示カード (以下カード) の所持状況、2)移植について家庭内話題状況、3)組織移植に対する関心、4)臓器・組織提供の本人意志、について行った。
[結果] アンケート回収率は 61%であり、 すべてに回答が得られた 390 例 (男 70%、 女 30% ) を集計した。1)のカードの所持は「はい」 が 26%、 「いいえ」 が 74% であった。2)の臓器移植に関して家庭内で話題の有無は 「ある」 が 18%、 「なし」 が 82% であった。組織移植について家庭内で話題の有無は 「ある」 が 8%、 「なし」 が 92% であった。3)の組織移植に対する関心は「ある」 が 50%、 「ない」 が 50% であった。4)の臓器・組織提供の意思は、一つ以上の臓器・組織提供の意志がある者が30.0%、 すべて提供する意志がある者は 16% であった。
[考察] カード所持率は、臓器移植に関する平成18年度世論調査結果の8% に比べ 26% と非常に高かった。家庭内で話題があった割合は世論調査の 8% に比べ臓器移植は高く、 組織移植は同等であった。提供の意志がある割合は世論調査結果約 40% に比べ 30% と低かったが、カード所持率を上回っていた。これらの傾向は世論調査と同様であった。以上から若年者に組織提供の重要性に関して理解を求めていく必要があると思われた。またカードを普及させることで提供者の意思をより反映できる可能性が示された。

 

演題17.  移植コーディネーター概論という講義を通して

今川理映子、青木大、明石優美、小塚寛太、田中秀治、島崎修次、山口芳裕
杏林大学医学部付属病院 組織移植センター
杏林大学医学部 救急医学
国士舘大学体育学部スポーツ医科学科 救急医学

杏林大学医学部付属病院では、臓器・組織移植が普遍的医療となることを想定し、これに先進的に取り組む為に、平成11年4月1日組織移植センターを設立した。
それと平行し杏林大学保健学部では世界で初となる大学講座として、移植コーディネーター概論を開設した。移植医療の最前線に立つ関係者を学内外から講師として迎え、半年間で13コマ行っている。この講義は保健学部に在籍する看護師・臨床検査技師・救急救命士などを目指す1〜2年生を対象に行っており、1)臓器・組織移植医療についてはもとより、2)脳死下臓器提供を経験した病院の医師から、3)移植に携わる医師・コーディネーターなどから、移植とさまざまな役職の係わりなどを含め、どのように臓器提供に関わったかなど、4)脳死判定のビデオを交えた講義 5)講義や厚生労働省健康局疾病対策課臓器対策室の室長から現在の臓器移植の問題点など、最先端の情報にあふれた講義が行われている。6)さらに医学的な講義のみならずコミュニケーションに関する講義なども交え、講義の最後には、これまで学習した知識を活用して、コーディネーター役・家族役などに別れ、インフォームドコンセントのロールプレイも実施している。
今回、全13回のオムニバス式の講義終了後、受講生に、1)受講前と受講後で臓器・組織提供に関する考えが変わったか、2)脳死は人の死という考えに受講前と受講後ではどのように変化があったか、3)自分は提供したいか、4)家族が提供者だった場合どうするか、などのアンケートを実施したところ、これまで提供に関して否定的であった学生が講義終了後に意思表示カードを携帯したり、また逆に、提供に関して慎重になるなどの結果が得られた。大多数の学生が、臓器・組織提供、移植に関して深く考える機会がなく、本講義を通して真剣に考え、また、提供という行為を自分ひとりでだけ考えるのではなく、家族とも話し合いを持ったということがアンケートより判明した。講義を受講した学生がどのように変化したかアンケート結果を分析し報告する。

 

演題18.  コーディネーターからみた札幌医科大学附属病院で発生した
脳死下臓器及び組織提供の一症例

中山久枝1)2)、宮田圭3)、奈良理3)、栗本義彦3)、森和久3)、成松英智3)、浅井康文3)
1)札幌医科大学附属病院眼科、2)財団法人北海道アイバンク、
3)札幌医科大学附属病院高度救命救急センター

脳死下臓器提供に伴い組織提供を受けた症例を経験し、コーディネーターからの視点での問題点を報告する。
症例は20歳代女性。頭部外傷による臨床的脳死判定後、家族より主治医へ臓器提供の意思が伝えられ、主治医から日本臓器移植ネットワークへ心停止下での臓器提供の可能性につき連絡がされた。情報発生を受けコーディネーターが出動し情報収集中に臓器提供意思表示カード所持の情報が家族から入り、脳死下臓器提供情報へ変更された。
  家族への二回のインフォームドコンセントの後に心臓、肝臓、肺、膵臓、腎臓、小腸と組織(皮膚)の提供承諾を得た。
患者所持の臓器提供意思表示カードは、1997年に「臓器の移植に関する法律」が施行された当初に発行された、1番の脳死下臓器提供の欄に眼球の記載が無いカードであった為、家族から質問があった眼球に関しては、提供可能な臓器の提示としては不可能であり、眼球の提供には至らなかった。
  組織移植コーディネーターおよびアイバンクコーディネーター、院内臓器移植連絡調整者(院内コーディネーター)として本症例を経験した。
眼球提供が臓器移植法によって阻まれ、提供に至らなかったことについて今後も問題となる可能性があり報告した。

 

演題19.  3例の心停止下膵島提供症例を経験して

吉開俊一1)、山本小奈実2)、飼野千恵美2)
1) 医療法人財団池友会 小文字病院脳神経外科・院内移植コーディネーター
2) 医療法人財団池友会 小文字病院ICU看護部・院内移植コーディネーター

我々は、積極的なオプション提示により2003年より心停止後献腎13症例を得た。そして2006年秋より献腎に加え膵島提供のオプション提示も行うこととした。その結果、(症例1)2006年11月2日くも膜下出血の57歳女性、(症例2)同年12月26日脳幹出血の58歳男性(元来アルコール性肝障害・肝硬変・血小板減少あり)、(症例3)2007年2月16日視床出血の58歳女性より、心停止下膵臓摘出・膵島提供を経験した。症例2より調製された膵島数は移植には不足し冷凍保存となった。一方症例1と症例3よりは十分な膵島組織が調製され、同一糖尿病レシピエントへ移植された。2回の移植の結果、レシピエントの血糖制御は著しく容易となった。各膵島提供症例の死亡前管理は献腎の際の調節に依存した。即ち当施設では旧厚生省の腎臓提供施設マニュアルに掲載されている全身あるいは腎臓データの細部調節にはこだわらず、ヘパリンによる抗凝固処置のみ行い、その他の病態は自然のままの経過にて心停止を迎え腎臓摘出に向かっている。その際、長時間の無尿状態による脱水・電解質異常が合併するも移植腎機能は良好である事を自験例で確認している。また一般的には臓器急速冷却・保存目的でカニュレーションを行っているが、症例1と症例2では心停止前にカニュレーションは行わず、腎摘出時に大動脈から速やかにカニュレーションを行い臓器保存を図った。それら死戦期における臓器にとっての比較的不良条件下でも症例1では機能有効な膵島を調節することが可能であった。この事は今後心停止下腎臓提供を発展させると同時に膵島移植も発展する可能性を意味している。