特別フォーラム(2)
「組織移植医療の定着を求めて」 〜コーディネーターの立場から〜
1. 「院内コーディネーターの活動と角膜提供数の変化」
米満ゆみ子1)2)、吉江見幸1)、佐々木紀美1)2)、山内美和子1)、多田明未1)
1)恩賜財団 福井県済生会病院 看護部 臓器移植院内コーディネーター
2)組織移植学会認定コーディネーター
当院では、平成14年4月に院内コーディネーター(以後院内Co)1名が設置されて以来、5年間で5名の院内Coが配備されるに至った。院内Co設置前は、年間4〜8眼の角膜提供数で、院内の移植医療への情報提供や啓発活動も行われていなかった。しかし、設置後5年間で院内での提供意思の確認がルーチン化され、56〜58眼の提供数にまで飛躍的に拡大した。その活動と効果は後述の通りである。
@院内での普及啓発活動
⇒院内Coを通じ、医局会や新任医師研修会などコンスタントに移植医療への動向を報告し、「臓器・組織提供への意思確認は、患者の権利であり医療従事者の義務である」ことへの理解が拡大し、臓器提供への意識の変化(否定→肯定)15.8%(当院医師アンケート)を見た。
A提供意思確認
⇒死亡症例すべてに医師による「死亡報告書」の記入が義務付けられた。その書式に「意思確認欄」を設け、視覚的に意思確認を促すツールを作成した。角膜提供希望家族へのインフォームドコンセント(以後IC)は院内Coが行っており、その際に使用するパンフレットを独自に作成し、ICの際に使用している。
B摘出眼科医・院内Coとの役割分担
⇒院内Co設置前、角膜提供時への対応のすべては眼科医師に委ねられていた。しかし、院内Co設置後からファーストコールは院内Coに移行され、眼科医は眼球摘出、強角膜作成、アイバンク報告書のみに整理された。その後、角膜提供数が増加するに従い、院内マニュアルにも「角膜提供者発生時の対応」が網羅され、院内スタッフへ周知と共に院内の連絡体制も整備された。
院内Coは、院内に精通したスタッフであり、臓器・組織医療の普及推進を行う中でより効果的に活動できる存在である。全国に約1000人存在していると言われている院内Coであるが、当院のように病院内の理解を獲得し活動できている院内Coはごく少数である。しかし、院内Coの地位が確立して活動の場が拡大すれば、臓器・組織提供数の増加が期待できる。全国体制を整備する事で、院内活動の標準化も期待でき、より効果的な移植医療の礎となる事が予想された。
2. 「組織移植推進のための都道府県Co.との協力体制構築について」
岩田誠司1)、金城亜哉2)、塚本美保3)
1)福岡県メディカルセンター、2)福岡大学医学部再生・移植医学講座、
3)日本臓器移植ネットワーク
都道府県の移植コーディネーター(県Co.)は、臓器提供のコーディネーションの部分においては日本臓器移植ネットワーク(NW)から委嘱を受けて活動し、基本的には所属先(腎バンクや病院等)の業務に従事している。言い換えれば、県Co.は、委嘱を受けた『臓器のコーディネーション』に関連した業務のみならず、その他の業務、例えば組織移植の推進活動等にも、条件さえ整えば大々的に協力できる立場であり、これがNW所属のCo.とは異なる点である。
組織移植の発展を考えるとき、一般市民への認知度を高めること、医療機関に提供への協力・理解を得ることの2点が大きなポイントになると考えられる。現在、この役割を担うのは、主に各組織バンクや組織移植ネットワーク所属のCo.であるのだが、これらの活動を進めるうえで現実的には様々な障害も存在する。
一般への啓発活動には、例えばイベントの企画や機関紙の発行や配布活動、メディアの活用などがあげられるが、相応のマンパワーや費用も必要となる。
病院への啓発活動については、単発的にならない継続的で細やかな関わりが求められるが、広域をカバーする組織移植Co.にとっては、頻繁な訪問も時間的・資金的に限界があり、目の行き届いた啓発活動は難しいものと思われる。
しかし前述した県Co.の全面的な協力が得られれば、県Co.が普段行っている『臓器移植』の一般啓発や病院開発の活動に、『組織移植』を付帯するというスタンスになるので非常に効率的・経済的となる。また、組織提供に伴うI.Cや承諾書の作成などのコーディネーション業務も、地域に根ざした利点を駆使できる県Co.が組織移植Co.に協力できれば、よりスピーディーで低負担な対応も可能となるものと思われる。
組織移植発展の方策の一つとしての、県Coとの協力体制の構築方法について言及したい。
3. 「組織移植医療の定着を求めて―(社)日本臓器移植ネットワークコーディネーターの立場から―」
中山 恭伸
(社)日本臓器移植ネットワーク西日本支部
腎臓移植医療が始まった当初は、移植を行う医師が臓器提供希望者のご家族に会い、承諾手続きを含むあっせん業務を一手に担って行ってきた。しかし、移植を行う医師が承諾手続きを行うのは、偏った情報提供になる可能性があることから、第三者的な立場の者として、臓器移植コーディネーターが立ち上がってきた歴史がある。
組織移植医療も始まった当初は、心臓弁や皮膚等の組織毎に別々のバンク等が立ち上がり、移植を行う医師が提供者ご家族に会い、承諾手続き等のあっせんに関する手続きを行ってきた。また、組織提供希望者の情報は、多くの場合、臓器移植コーディネーターを介して提供してきた。この事に関する問題点を改善すべく、組織移植ネットワークが立ち上がり、専属のコーディネーターが設置されて現在活動を行っている。しかし、未だ組織移植医療が十分に定着しているとは言い難い現状であろう。
組織移植ネットワークが立ち上がることとなったときは、今まで臓器あっせんの現場で、我々臓器移植コーディネーターが担ってきた、組織移植バンクとの連絡調整等の負担が減り、より正確かつ詳細な情報を提供希望者家族に与えることができると考え、組織移植医療も大いに発展していくものと考えた。だが実際には、全く提供数の増加は見られていない。問題点はどこにあるのか。我々、(社)日本臓器移植ネットワークコーディネーターの反省もふまえ、課題について議論したい。
4. 「組織移植医療の定着を求めて―組織移植コーディネーターの立場から―」
増谷友紀1)2) 大河原弘達1)3) 青木大1)4) 渡邉和誉1)5) 中谷武嗣1)2)
北村惣一郎1)
1)西日本組織移植ネットワーク 2)国立循環器病センター臓器移植部
3)神戸大学医学部21世紀COEプログラム 4)杏林大学組織移植センター
5)財団法人兵庫アイバンク
我が国における組織移植への取り組みは欧米と比べ遅れており、当初は限られた地域で行われていた。その後ネットワーク形成の必要性が認識され、2001年には日本組織移植学会(以下JSTT) が設立され、同年前身の研究会より東日本組織移植ネットワーク(以下東NW)が発足した。また2004年には西日本組織移植ネットワーク(以下西NW)が発足した。2005年には組織移植コーディネーター(以下組織移植Co.)の資質向上、発展、教育などを目的にJSTT認定組織移植Co.(以下認定Co.)制度ができ、先進医療の認可に認定Co.の設置が条件となっている。現在組織バンク所属の組織移植Co.のみならず都道府県Co.、アイバンクCo.、院内Co.などを含め約20名のCo.が資格を取得している。
このような経緯と現状を踏まえ、組織移植Co.の活動を行う上での問題点とその展望を検討したい。
まず、ドナーファミリー(以下DF)に対し、臓器と組織提供のインフォームド・コンセント(以下IC)が別々の機会に行われることが多く、臓器移植Co.による組織のOP提示時に、さらに組織提供の説明を聞くことを負担に感じ断られるケースがある。これには、臓器移植Co.との協力体制の下、できる限り同時にICを行い、DFの負担の軽減を目指すことが早急に求められる。また院内Co.の設置施設では、その病院の性質を見極めた上で効率良い啓発活動や症例対応が可能となるため、提供マニュアル作成など、個々に応じた体制作りが必要である。その他の問題点として、東・西NWの組織移植Co.の不足があるが、その一方で組織移植Co.の雇用や活動費の問題もあり、社会的な認知やそれに伴う実績が今後必要と考えられる。さらに、組織提供時、提供病院に少なからず発生する人件費や日常業務への支障に対し、保障できる体制整備が望ましい。今後、組織移植Co.の広い認知を目指すのみならず、臓器移植Co.、都道府県Co.、アイバンクCo.、院内Co.などとの連携活動にも積極的に取り組み、DFや提供病院への負担がより軽減するような体制を構築する必要がある。 |